「小笠原諸島に学ぶ進化論」(清水善和)
目次
概要
2010年発行、
「小笠原諸島に学ぶ進化論」
―閉ざされた世界の特異な生き物たち―(清水善和)。
一般向けの書物であるが、専門的なところもあり、
やや難しく感じるところもあるだろう。
著者は植物の研究者。
植物を主の題材として、
海洋島や小笠原の進化の特徴を述べている。
「4章:脆弱な島への生物の侵入と保護」では、
小笠原に危機をもたらす動植物についても述べられる。
小笠原の世界自然遺産登録は2011/6月。
本書は世界遺産登録前に発行されている。
したがって、
「5章:世界遺産申請とこれからの小笠原」は
すでにほぼ実施されている。
この本には、
ガイドネタがたくさんあると思う。
この本を読んでからツアーに参加する方には、
本の内容を実地で確かめるいいチャンス。
目次
1章:海洋島の生物相と進化の法則
2章:小笠原諸島の歴史と生物の由来
3章:小笠原諸島のユニークな生物たち
4章:脆弱な島への生物の侵入と保護
5章:世界遺産申請とこれからの小笠原
島症候群
(53-55ページ記載)
カールキストは、
海洋島の生物相の特徴を「島症候群」とした。
それを、
著者が改変し本書で述べている。
以下15項目、
・・・
1.生物相が貧弱である
2.生物相が非調和(アンバランス)である
3.独自性(固有性)が高い
4.属島ごとの固有種が多い(単島固有種)
5.適応放散が起こりやすい
6.食物連鎖が単純である
7.生態的解除現象が見られる
8.植生遷移が単純である
9.移動(分散・散布)能力が低下する
10.防御能力が低下する(恐れ知らず)
11.新ニッチを開拓する
12.草本が樹木化する
13.目立たない花が多く、雌雄異株の割合が高い
14.希少性が高い(絶滅しやすい)
15.外来種が侵入しやすい
・・・
実感としても、たしかにと思う。
東洋のガラパゴス
(本文154-155ページ)
小笠原は、
かつて「東洋のガラパゴス」といわれた。
(世界自然遺産となって、その冠ははずれている)
(小笠原も、オンリー1、ナンバー1だから)
国内では、
奄美や沖縄でも使われる事例がある。
著者は、海洋島ではない島で、
その冠を使うのはおかしいと主張。
(奄美・沖縄は陸繋島・大陸島)
小笠原こそが、
その内容にふさわしいとのこと。
僕もそう思う。
現在では
小笠原・奄美・沖縄とも世界自然遺産となっている。
「東洋のガラパゴス」の冠はいらない。
著 者
著者は、1976年より小笠原諸島に通い続け、
大洋島の植物の進化・生態とその保護について、
調査・研究を続けてきた。
小笠原の自然関連の会議では、
委員や座長をされている。
僕も会議や島内で何度もお目にかかっている。
参考
世界自然遺産小笠原諸島について|東京都小笠原支庁 (tokyo.lg.jp)
小笠原世界遺産センター (ogasawara-info.jp)
計画書・ガイドライン等 | 小笠原世界遺産センター (ogasawara-info.jp)
体験するなら
本書に書かれていることは
自分で歩くだけではわかりにくい。
ガイドツアーであれば、森歩きをお勧めする。
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