小笠原マルベリー

商工会青年部先進地沖縄視察旅行報告(2003訪問・再編集版)


商工会青年部先進地視察旅行報告(沖縄2003訪問・再編集版)

 

2020年時点、それぞれの地域も変わっていることと思います。

あくまでも、2003年に見て感じた当時の地域です。

短い時間の視察ですので、本質をついていないところもあろうかとは思いマス。

ご容赦下さい。

 

 

概要

・・・・・・・・・・・・・・

すでに国内でエコツーリズムを取り入れて活動している地域として沖縄が上げられるが、

その中でも、早い時期からエコツーリズム協会を立ち上げ活動している2地域(西表島・本島東村)を

選び、地域の自然特性やエコツーリズム実情を視察することを目的とする。

さらに、沖縄本島では希望者により個人研修期間を1日設けた。

 

日 程:

12/3

西表島

竹富町商工会、西表島野生生物保護センター、

西表島エコツーリズム協会 訪問

12/4

西表島

フィールド視察(エコツアー体験)

12/5

沖縄本島

東村

やんばる野生生物保護センター 東村商工会 

東村エコツーリズム協会  訪問

東村フィールド視察(エコツアー体験)

12/6

沖縄本島東村

読谷村

観光ポイント見学  

読谷村ネイチャーワークス訪問

12/7

沖縄本島南部

戦跡めぐり

  

 

総 括:

2003年の先進地視察旅行は、沖縄(西表島・沖縄本島東村)に行った。

個人としては10年ぶりぐらいの沖縄旅行だったが、

まず何よりも沖縄の香りをいの一番に感じ、旅行の最後まで沖縄を感じていた。

それは、一言でいえば、伝統や文化なのだろう。

特に旅行者が接して感じるのは食文化や人や景観だ。

これは小笠原にはまだあまり感じにくい部分で、見習うところが多い。

 

アクセスのよさも、小笠原に住んでることで非常に痛感した。

よく同じ亜熱帯の離島で比較される西表島でさえも、空港がないにもかかわらず、

東京から半日で着いてしまう便利さには驚いた。

 

沖縄は飛行機で行くわけだが、窓から見下ろすと、陸地の外にリーフが広がり、

小笠原とは違う、南の島の光景がまた印象的だった。

西表島では、島のスケールの大きさや伝統的な地域のまとまりの難しさを感じた。

西表島は父島の10倍以上の大きさがあり、島にはいくつかの大きな川が流れ、

非常に生き物も豊富に見られ、

そこがもっぱらカヤックツアーのフィールドとして利用されている。

道路は島の周辺部のみを回っていて、集落も周辺部にのみ何ヶ所かあるだけだ。

そこから見上げる中心部は雄大な感じで、島には見えない。

 

エコツアーのフィールドの視点で見ると、

汽水域はマングローブに覆われ、水辺の生き物が豊富に見られる特徴があり、

自然度が圧倒的なので、誰でもそれなりに満足度の高いツアーを提供できるだろうという、

小笠原の海のツアーに似た部分を感じた。

そんな中で、外部からのガイドの流入や特定フィールドの過度の利用が問題化している。

さらに、実際には遊覧観光や日帰り観光が盛んな島なので、

マスツアーに典型的な問題も指摘されていた。

色々解決していかなければならない問題があり、徐々に取り組んでいるようだ。

 

自然の保護・保全の面で見ると、西表島野生生物保護センターが、

イリオモテヤマネコを中心とした生態系の保全ということで、

動物に関しては中心的な機能をしており、情報も集まっているようだ。

研究者との連携もうまくいてるようだったが、

エコツーリズムとの関係においては、ちょっと距離をおいた感じがした。

また、植生・植物などの保全に関しては林野庁ということだったが、あまりはっきりしなかった。

エコツーリズム協会もある程度はいくつかの事業をやられてはいるようだった。

短い日程だったので、本質的なことはわかっていないのだろうが、

西表島では行政や商工会、エコツーリズム協会、住民などそれぞれのかかわりが

あまりスムーズではないのが感じられた。

大きな島に部落が点在し、部落には部落ごとの伝統があり、

町役場や商工会は石垣島にあるというような、人が集まりにくく、

島としてまとめにくい要素の多いところが意思の疎通を悪くしてるのかも知れない。

東村では、地域おこしとしてのエコツーリズムや自然の豊かさと、

反面それ以外の観光資源の少なさを感じた。

もともとエコツーリズムの発端はこの村を基幹産業である農業・漁業の危機感から出ており、

観光による村おこしとしての始まりであった。

したがって、地域振興のためのエコツーリズムという認識に立っている。

事業は商工会が中心的機能をし、行政や関係機関との関わりも努力しつつ、

わりとうまく行ってるようだ。

実際、エコツアーは修学旅行などの自然体験プログラムとして利用され成功しているので、

その成果もエコツーリズムの推進には役立っていると思われる。

ただ、エコツアー以外の関連分野はまだまだこれからという感じであった。

今後の事業展開もいろいろプランが考えられている。

具体的にはエコツアーのプログラムを増やすことや、

ブルー・グリーンツーリズムの振興をすすめ、連携・融合すること。

エコツーリズム関連の事業(宿泊・商店)を振興して行くことなどだ。

エコツアーの分野では、海に山にまずまずのフィールドを持ち、

ブルー・グリーンも含めて考えると、たくさんのプログラムを提供することが可能となる。

そうなると修学旅行の利用がさらに進むのではないだろうか。

東村の自然については、後方にやんばるの森を持っているが、

エコツー以外の利用はほとんど進んでいない。

見て回った限りでは、名所・旧跡・施設もこれといったものはそれほどないので、

沖縄に多い、団体バス観光も利用されていない。

それゆえ、エコツーリズムの推進は起こるべくして起こったという感じがした。

やんばる地域の保全・保護については、村・民有地が多く、法規制がほとんどなく、

島と違い陸続きで、外部からの入り込みの管理がしにくい不利な面がある。

そんな中、やんばる野生生物保護センターが中心的な機能をしている。

東村からは離れているので、東村を利用する人には利用しにくい感があった。

このセンターが所在している村ではエコツアーサイトにちかく、

それとともに利用されているそうだ。

西表島、やんばるとも野生生物保護センターがあり、

環境省の職員がいることで、

地元との情報のやり取りがスムーズで、すばやく手をうてる効果がある。

ぜひ、小笠原も欲しい施設だ。

読谷村ではエコツアーを提供しているネイチャーワークス 平井氏を訪問した。

沖縄県のエコツーリズムの取り組みや、

本島での修学旅行対応のエコツアーのネットワークについて話を聞いた。

特に、本島でのエコツアーネットワークは修学旅行や団体を対応する上で、

小笠原でも参考になる事例であった。

沖縄の戦跡は、一般の人を巻き込んだ戦闘という経緯をもつので、

重々しい感じを常に感じざるを得なかった。

ガイドの話次第で、重苦しさに軽重つけることは可能だろう。

平和を訴えたり、戦争の悲惨さやむなしさを伝えるには充分すぎるものだが、

やり方が悪いと、感受性の強い人には拒絶につながるということもあるそうだ。

時間の都合で観光利用されている3ヵ所だけしかみれなかったが、

整備の面からも学ぶところがあった。

できるだけ自然のままで、出入り口と崩落防止の管理のみをし、電灯をつけていないアブチラガマと、

ほぼ全面的に整備した海軍司令部壕と、整備の両面を見てきた。

やはりアブチラガマの方が印象が強いものであった。

ちなみに両施設とも入場料を取るようになっていた。

 

フィールド体験:

西表島カヤックツアー   LBカヤックステーション 中神氏

ガイドの中神氏とは以前に知り合っていたため、自然の話以外にも、

エコツアーやエコツーリズム関連の話をしながら遊んだ。

行程としては白浜より仲間川をさかのぼり、支流をさらにさかのぼり、

最後は川歩きをして、またカヤックで戻るコース。

時々なめていると、塩分の変わっていくのがよく分かり、

最後は完全に淡水のところまで行った。

川の周囲はマングローブからふつうの樹林に変化した。

樹林は以前に人の手が入っていた場所であるとのこと。

ツアーは水で遊ぶことをキーワードに開催しており、

西表では定番の川と滝というコースはあまり使わない模様。

人が使わない場所をなるたけ使う。 

ガイドスタイルは自然を充分感じることや、楽しむことを意識している。

したがって、あまり解説やおしゃべりは多くない。

不思議に感じていることをネタによく使っていた。
自然度の高いところでは、ガイドが意識してしゃべりを減らすことも重要だろう。

要はつぼを押えればいいのだ。

総括でも書いたが、生き物が豊富で、生き物は見ているだけで楽しめ、

植物の話しをしなくてもやっていけるフィールドだ。

特に、コメツキガニは楽しめる素材だった。

島なのに、川でカヤックをやるというのも、

小さな島に住んでる身分としては不思議な感じがした。

実際には夏場はよく海も使っているそうだ。

昼食は準備していた食材をコンロでゆでて沖縄そばを食べた。

弁当ではなく、ツアー中に昼食をつくり、また地元の物を使うという両面で素敵に感じた。

荷物を運べるカヤックツアーならではだ。

東村マングローブ自然観察  やんばる自然熟  
 
やんばるでは代表的なマングローブを自然観察するコースで、

数年前に環境への配慮から木道が整備されて、そこを歩く。

コースには緩やかな高低差があり、地面に近く観察できる場所もあった。

ちょっと距離が物足りない感じは、もともと環境への配慮から作られたので、

そういう観点からするとあまり延ばせないようだった。

この木道では、自然体験の重要な要素である、接触ができにくい点はデメリットである。

ここは車道からはそれほど離れていないため、車の音が非常に気になったが、

このツアーを利用する都会の客層の人にはあまり気にならないのかもしれない。

ツアー自体は1時間程度の設定なので、

マングローブとカニなどにターゲットをしぼってやるにはちょうどいい時間である。

それ以上になると、距離が物足りなくなってしまう。

自然体験の入り口という位置付けでやるツアーであればちょうどいいのだろう。

 

 

<小笠原が学ぶところ>

地域が民・官ともにまとまってエコツーリズムに取り組むこと。

地元の食材の活用

農漁業体験などを観光に取り込んでのメニューの多様化

各業者のネットワーク化によって、修学旅行などの受け入れ対応の整備。

戦跡の歴史遺産として観光活用

環境省職員や施設の配置の必要性

小笠原のエコツーリズムに対する地域のコンセンサスの必要性
 理念や具体的定義など

環境問題を、地球規模で考え、地域でしっかり行動すること

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この視察からすでに20年近くが経ちます。

「小笠原が学ぶこと」で書いたこと、

できたもの、まだなもの、それぞれあります。

 

地域が民・官ともにまとまってエコツーリズムに取り組むこと:〇

 エコツーリズム協議会ができて、動いています。

 

地元の食材の活用:△ー〇

 まだまだやれそうです。

 

農漁業体験などを観光に取り込んでのメニューの多様化:×ー△

 あまり進んでいない気がします。これからでしょうか。

 

各業者のネットワーク化によって、修学旅行などの受け入れ対応の整備:△

 大人数の修学旅行はいまだ少ないです。受け入れも難しいです。

 小笠原の適正人数はせいぜい50人以下かと思います。

 

戦跡の歴史遺産として観光活用:〇

 戦跡ツアーは行われていますが、保全に関してはほぼ動いていません。

 

環境省職員や施設の配置の必要性:〇

 配備されています。

 

小笠原のエコツーリズムに対する地域のコンセンサスの必要性:〇

 理念や具体的定義など:〇

 エコツーリズム協議会で議論されています。

 

環境問題を、地球規模で考え、地域でしっかり行動すること:△

 個人差がありますね。

 

 

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    この記事を書いた人

    吉井 信秋

    大阪市旭区生まれ。 茨城県立水戸一高で硬式野球部所属。 北海道大学農学部林産学科(現・森林科学科)卒業。 某企業に就職、栃木県鹿沼市の研究所に配属される。 数年後、異動により東京勤務。さらに数年後、依願退職。 その後、小笠原・父島に移住。 島でいくつかの仕事を経験後、2000年独立開業。 小笠原で山歩き、森歩き、戦跡などの陸域専門ガイドを勤める。

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