小笠原マルベリー

先進地共同視察報告・長崎県小値賀島(2012年・再編集版)


先進地共同視察報告・長崎県小値賀島(2012年・再編集版)

 

概要

 

2012年11月、先進地共同視察で長崎県小値賀島を訪れました。

そのときの報告・写真記録です。

 おぢか島旅| 長崎県五島列島・小値賀町 | 

 

視察日程は、

11/14東京から小値賀島移動

11/15 野崎島、古民家レストラン、古民家ステイ、小値賀町担い手公社、小値賀島観光

11/16おぢかアイランドツーリズム協会ヒアリング 小値賀から東京へ、でした。

 

 

平成24年度先進地共同視察:小値賀島視察報告書

1.各視察先での意見交換や施設見学にて、参考になったことをご記入ください。

 

11月15日(木)古民家レストラン「藤松」

かつての豪商の古民家を利用したレストラン。
古民家から海まで続く歩道があり、海の出口に門があり小さな桟橋まで残っています。
当時の面影がよく偲ばれます。

 
店内はいくつかのタイプの席があり、とてもくつろげるようになっていました。


料理も創作和食料理ということで古民家の雰囲気にマッチしています。
料金はかなり高めの設定となっています。
当日いただいたのは普段提供しているものより価格の安いものをオーダーしたようですが、
地のものを生かし上品な料理でおいしくいただけました。

ただ、団体の対応に慣れていないのか、料理を出す段取りが悪く、
ご飯・汁物のあとにずいぶん遅れておかずが出てくるような形になり、

物足りない形となりました。

本来は少人数で行くべき場所のように思いましたけど・・。
 



11月15日(木)古民家ステイ「親家」

午後の観光の途中に立ち寄りました。
廃屋となっている民家の奥に入っていくと武家屋敷「親家」ともう
1つ古民家がありました。
貸切タイプの宿(自炊可)として
1115000円以上でやや高価格です。
(好みにより朝食ケータリングサービスや古民家レストランへの送迎サービスもあり。

古民家レストランで夕食を取ると125000円くらいになるそうです。)

武家屋敷を綺麗に修復し、部屋の一部屋・浴槽など、

現代人が利用しやすいように改装もしてあります。
そのあたりの利便性は、

宿泊する都会の人の暮らしにマッチするような配慮もなされています。
この部分は好みの部分でもありますが、武家屋敷をどっぷりつかりたい人には、

やや興ざめな部分でもあるように感じました。
                            


この宿の客層ターゲットは金銭に余裕のある都会の女性です。
実際に、東京からの来島者の宿泊がかなり多いようです。
これまで多かった修学旅行・学校関係とは違う客層を発掘するのに一役買っているようです。

小値賀にはまだまだ廃屋となった古民家があるようですから、
今後もこのタイプの宿泊施設は増えるように思います。
                                       

古民家レストラン・ステイは各集落に点在して存在するため、
その中は古民家の雰囲気に浸れますが、周辺に出たときにはふつうの風景が広がっています。
まだ古民家だけがぽつんと存在する形です。

風景としてみた場合に、まだ点としての存在でした。
 



11月15日(木)野崎島ガイドツアー

午前、町営渡船に乗って、無人島の野崎島へ。
無人島とはいえ、旧小学校の廃校を使用した自然学塾村があるので、

完全に無人状態ではないようです。
電気・水道も通っています。

自然学塾村はおぢかアイランドツーリズム協会が運営受託しています。
付近の旧野首教会の管理も同様のようです。

自然学塾村があるために宿泊での滞在もできます。


野崎島は近年まで住民がいた集落は廃屋状態で残っています。
野生状態のシカがいてシカ柵も残っています。
シカの食害により無人島のわりには植生が復活していないように感じました。


今回の視察では半日ツアーで、町営渡船で渡った野崎港から旧野首教会へのコースで、
帰路は野首港からチャーター漁船で戻りました。
廃屋の旧集落内を歩き、シカを見たりしながら、旧野首教会でその歴史を知りました。

帰路、野首港へ下る時に野崎ダムが広がっていました。
このダムは小値賀島への農業用水を安定供給するために作られたものでした。

水はパイプラインで運ばれています。
農業用水整備のためのダム施設は無人島の活用事例として参考になるものでした。
ただ小笠原諸島のように、
属島がみな国立公園特別保護地区になっているようなところでは

無理なことではありますが・・ 



11月15日(木)小値賀島内ガイドツアー

午後はバスに乗って島内ガイドツアーでした。
自然よりもむしろ人の暮らしや歴史にかかわるものが主体でした。
地ノ神島神社、姫の松原(車窓)、古民家(別項目で記載)、ポットホール、
アワビ種苗センター、小値賀担い手公社(別項目視察)などでした。




島内には特に際立つ観光資源はないようですが、

ガイドさんの解説で島の歴史文化をよく理解することができました。
これはどこでもそうですが、ガイドツアーによって、
一見するとたいしたことなさそうな観光資源の価値を高めることができます。



11月15日(木)財団法人小値賀町担い手公社

農業の振興や人材育成のために設立・運営されている公社です。
畑地帯総合整備事業により、

前述の野崎ダムからの農業用水の供給などで土地基盤の整備も完了し、
安定した農業経営が出来る状態になったところで設立されたものです。


ここで見学したのは研修施設全般とゆうきセンター(堆肥を作る施設)などでした。

研修事業として新規就農希望者への研修が実施されており、
実際に視察日も研修生が作業されているところを目にしました。 


新たな作物としては実えんどうが成果を上げているようです。 

一方で畑の放棄地があったりで農業が必ずしも順風満帆というわけでもないようです。



この担い手公社が小値賀島の農業の振興や人材育成に役立つ組織としては

重要な位置付けにあるのを感じました。

11月16日(金)NPO法人おぢかアイランドツーリズム協会

観光協会・自然学校・民泊組織が合併してできたのがこの協会です。
さらに事業推進のため、

旅行業、営業、広報にかかわる株式会社小値賀島まちづくり公社が設立されて、
両組織が一体となっておぢかアイランドツーリズムとして機能しています。


ガイド、民泊、無人島・自然学塾村管理運営、古民家ステイ・レストランなども、

この組織でやっていますので、各種手配も含めて、

小値賀島の観光を独占的に一手に取り仕切っているといっても過言ではない組織です。
観光客にとってトータルに旅を作る組織といえます。
小さな島での観光戦略としては理想的な組織ができていると考えます。




実際に視察してみて、観光での事業はいずれも他地域で事例があることをはじめています。
先進的な取り組みはこの組織作りにつきます。
ただこういう組織を

既存の民間観光事業者や旅行社がすでにある状態の地域で作れるかというと
そこはかなり困難であろうと考えます。
多角経営する民間事業者がグループ内や事業者間で連携して、

こういう取組をするのは可能ではあると思います。
観光が
0ベースの地域では有効な手段と考えます。

事業推進のサポーター・パートナーとして著名な作家アレックス・カーさんの存在も

大きいのではないでしょうか。
古民家再生は彼のアイデアによるところが大きいようです。
こういう著名な方が島を気に入ってくれることであらゆるところでの

PR効果もあることと思います。
観光大使の取組は全国的に行われていますが、それがほんとうに機能しているか、

そこも大事な点です。

彼らの考えとして参考になったのは、「できること・できないこと」を

はっきりさせるということです。
観光業もお客様の要望があればどうしても無理をしがちです。
しかしそこはきっちりと線を引くことが、ステイタスを維持するためにも重要なのですね。

さらに彼らの取組は「観光地域づくり」であるとうことです。
そのことにより担い手を作り、次世代つなげていくということをかかげています。
実際に最近は島にIターン・Uターンで若者が増えつつあるそうです。 

 

 

2.今回の視察を参考に、各島で実施できる(したい)取組みをご記入下さい。

 

実際に視察した観光面での取り組みは、他地域ですでに実施されていることばかりで、

それほど参考になるものはありませんでした。

おぢかアイランドツーリズムのヒアリングで、2つの言葉がとても印象的でした。
「できること・できないことをはっきり」「観光地域作り」。内容は前述のとおりです。
小笠原も観光地ですが、自然資源以外ではないもののほうが多いような小さな島です。
その点においては小値賀以上と思います。

ですから小笠原でもこの言葉は肝に銘じていく必要があると考えます。
未来へ残すためにも。

 

 

3.2で記入した取組みを実現するための課題や対応策等をご記入下さい。

 

小笠原は、自然資源以外は小値賀以上に何もない島です。
ですから、できることには限りがあります。

お客様の要望に何でもこたえることはできません。
そのためにも「できること・できないことをはっきり」することで、

あらかじめお客様にも知っていただき、
無理のない観光をしっかりと進めていかなければなりません。

小笠原で島の子供たちが高校を卒業すると、

ほとんどは進学目的で一度は内地に出て行きます。

そしてその後はそのまま内地で就職というパターンが多いのが現状です。
確かに小笠原は若い移住者が多いので、若い人材は不足はしていません。
しかし地元の子がきちんと地元で働ける地域にしていく必要もあります。
そのためにも「観光地域作り」をすすめるべきです。 
まずは各事業者が安定した経営し、

子供たちが跡を継げる形にしていくようにしなくてはいけません。
されにそれぞれの観光事業に誇りを持ってもらえるようにしていくことも大事でしょう。

 

 

4.今回の視察全般を通して感じたこと等をご記入ください。

 

小値賀島に関してはまったく観光地という感じがありませんでした。
閑散期でもあるでしょうが、ほかの観光客に出会うこともありませんでした。
だからもちろん小値賀島のウリは「何もない」「島の生活」です。

そんな島でも一つの組織によって観光が発展することを目の当たりにしました。
観光は自然・歴史の観光資源だけで成り立っているのではないのですね。

以上、小値賀の皆様、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

写真編

 


佐世保からフェリーなるしお乗船  2時間以上   


小値賀港 


中心地   

 
 
漁港


六社神社 


町役場

 


水産物販売所

 


宿泊宿 :小西旅館 

 


離島待合所


小値賀港ターミナルと町営バス 


おぢかアイランドツーリズムのヒアリング

 

 

古民家レストラン 藤松 

 

 

 


地ノ神島神社 

 

 
野崎島・沖ノ神島神社方面を望む

 


古民家ステイ 親家 

 


同 

 

 


ポットホール  斑島

 

 

 

 
アワビ種苗センター 斑島

 

 
畑地 


 小値賀町担い手公社 研修棟
 

 
研修ハウス


ゆうきセンター 撹拌施設 

 

 

 サツマイモ干し
 


ポットホール モニュメント

 

 

 

野崎島写真


町営渡船はまゆうで無人島野崎島へ 

 


野崎港 


 野崎港


 廃村


 段々畑跡

 

 

 

 


廃公務員宿舎 

 
野首海岸


自然学塾村・教会方面


 野崎島自然学塾村

 

 
学塾村から教会方面


 野首教会

 

 

 


野崎ダム 

 

 
野首港

 
チャーター船

 

 

 

あれから

 

この視察からもう10年近くが経とうとしています。

僕がこの視察でとても参考になったのは、2点で、

「できること・できないこと」をはっきりさせるということ、
「観光地域づくり」です。

 

「できること・できないこと」

地域としても、事業者としても、それぞれできる・できないがあるかと思います

そこを明確にしておくことは、お客様にとっても、大事ですね。

そのあたり、きっちりとはできていない気がします。

 

「観光地域づくり」

小笠原は移住者が多く、地元の子が出ていっても、

移住者でそれ以上の補填がなされています。

しかし、島で育った子が、島で生活する・できるようにすることが、

地域づくり理想形かと思います。

そして移住者との相乗効果で、より地域作りを進められれば、いうことないですね。

これもまだまだですね。

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    この記事を書いた人

    吉井 信秋

    大阪市旭区生まれ。 茨城県立水戸一高で硬式野球部所属。 北海道大学農学部林産学科(現・森林科学科)卒業。 某企業に就職、栃木県鹿沼市の研究所に配属される。 数年後、異動により東京勤務。さらに数年後、依願退職。 その後、小笠原・父島に移住。 島でいくつかの仕事を経験後、2000年独立開業。 小笠原で山歩き、森歩き、戦跡などの陸域専門ガイドを勤める。

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