小笠原マルベリー

「死なないと 帰れない島」(酒井聡平)

 

 

概要

 

2025年7月発行、

「死なないと 帰れない島」(酒井聡平)。

『死なないと、帰れない島』(酒井 聡平)|講談社

 

400ページを超えるので、

読み切るにはそれなりの読書欲も必要だ。

読むこととはいえ、体力が必要。

 

著者の前作は、

硫黄島での遺骨収容がテーマであった。

 

「硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ」(酒井聡平)

 

そしてこの作品では

「旧島民の帰島」がテーマとなっている。

 

 

小笠原諸島は1968年返還となったが、

有人島として復興したのは父島・母島。

硫黄島もかつて1000人以上が暮らしていたが、

有人島とならなかった。

ただし、自衛隊の基地はずっと存在している。

つまり自衛隊員は暮らしてもいるということだ。

 

ところが、実際には、帰島どころか、

訪問すら限られた条件でしかできない。

 

国の施策としても、

「定住は困難」ということになって久しい。

理由は

火山活動と、産業の成立条件の厳しさ」など。

しかし、

これには法的根拠は何もないようだ。

 

現実にそうなった事情を深く突き詰めて

調べられている。

そこには国内事情だけではなく、

米国(米軍)事情も大きく影響している。

 

本文では、旧島民への聞き取り、

帰島運動している旧島民・子孫などへの聞き取りも

交えて構成されている。

 

硫黄島、今後どうなるのであろうか?

よほど強い意志を持って誰かが動かない限りは、

きっと何も変わらないであろう。

これから

そういう動きをする人物が出てくるであろうか。

 

本書は、ぜひ、前作に引き続き、読んでいただき、

硫黄島の問題を少しでも知っていただきたい。

(解決は困難を要する)

 

 

 

 

 

【目次】

 

プロローグ 村が消えた日

 

第1章 違憲の島を歩く

第2章 トキ坊の夢

第3章 硫黄島少年記

第4章 密室の議事録

第5章 新生硫黄島

第6章 硫黄島民かく戦えり

第7章 祖国は島民を棄てたのか

第8章 2025年の硫黄島

 

エピローグ 天皇陛下の花

 

あとがき

主要参考文献

 

 

 

 

「洞窟の生存者」

 

島民軍属生存者の証言が、

第6章「硫黄島民かく戦えり」では主題。

 

原光一氏は

その軍属で硫黄島から生きのびた方である。

貴重な証言者である。

 

著者によると、「洞窟の証言者」(菊村到)は、

原光一氏の証言が元であろうと、

推定している(断定に近い)。

 

「洞窟の生存者」(菊村到)

 

 

 

 

 

本のタイトル

 

「死なないと 帰れない島」

 

これは遺骨収容をしている遺族の方の言葉。

本文(p35)でも紹介されている。

「死なないと、帰れない島なんですよ」と。

 

本のテーマとしては、

とても的を得たタイトルである。

まさにそうなのである。

 

ここからは余計な話。

 

本屋で平積みされたときは、

インパクトが前作より弱い気がする。

 

タイトルに「硫黄島」が出てこないからである。

前作は「硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ」

 

硫黄島があるなしで、

一般読者のパッと見たときの印象が違う気がする。

(酒井さん、余計なお世話ですみません)

 

 

 

 

 

参考:硫黄島の隊員の住民票

 

 

 

硫黄島には常時、海上・航空自衛隊の基地がある。

常時、隊員が300人ほど常駐している。

 

意外と知られていないが、

彼らは小笠原村民ではないのだ。

だから村民サービスは受けていない。

 

海上は綾瀬市など、航空は狭山市などに住民票がある。

 

国政や住民標がある地域の選挙は、

それぞれの役所職員が不在者投票に出向く。

(小笠原村職員もお手伝いしている)

 

なお、硫黄島には民間業者・スタッフも滞在している。

民間委託の食堂や鹿島建設がある。

選挙はどうしているのだろうか?

 

 

 

 

参考図書

 

小笠原・硫黄島関連図書

 

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    この記事を書いた人

    吉井 信秋

    大阪市旭区生まれ。 茨城県立水戸一高で硬式野球部所属。 北海道大学農学部林産学科(現・森林科学科)卒業。 某企業に就職、栃木県鹿沼市の研究所に配属される。 数年後、異動により東京勤務。さらに数年後、依願退職。 その後、小笠原・父島に移住。 島でいくつかの仕事を経験後、2000年独立開業。 小笠原で山歩き、森歩き、戦跡などの陸域専門ガイドを勤める。

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