「明治国家のこと」(司馬遼太郎 関川夏央編)
目次
概要
2015年発行、
「明治国家のこと 幕末・明治論コレクション」
(司馬遼太郎 関川夏央編)。
本書は幕末・明治コレクションとして、
18編が入っている。
司馬氏の文章は、たいがいはすらすらと読める。
余談や脱線が多いのも特徴かと。
本書では
日露戦争の頃の話題が多くなっている。
作品でいえば「坂の上の雲」。
司馬氏が膨大な資料を集め、年月をかけて、
作品を書いているのもわかる。
歴史小説ではあるが、
史実もきちんと押さえているのが分かる。
ご本人はかつて陸軍に所属していたので、
海軍のことがあまりわからなかった。
そのため、海軍のことは、
当時の軍人にもかなり聞き取りをしている。
感じたこと
この本を読んで感じたこと2つ。
明治時代で、のちに大きな影響を与えたのは、
大久保利通の暗殺と日露戦争なのではないだろうか。
西郷隆盛は
新たな明治政府では彼が生きる役割はなかったであろう。
(明治天皇は西郷が好きだったよう。)
大久保もそういう自覚はあったようだが、
慰留され内務卿として精力をかたむけます。
彼がもっと長生きしていれば、
もっときちんとした日本を作っていたようだ。
道半ばだったであろう。
日露戦争のころまでは、まだリアリズムがあった。
為政者は現実の日本の状態をよく把握していた。
日露戦争は
実際にはかろうじての判定勝ち。
(これもリアリズムのおかげ。
もし、これ以上長引いていれば、
間違いなく陸軍はやり返された。)
そんなことを、
国民もあまり実情を知らかなったこともあり、
政府に不満を募らせる。
戦争の検証や反省なく、
のちの軍部の動きにもつながっていく。
それでも、
幕末の人物がまだ健在だったころは歯止めがきいた。
日露戦争以降、
日本人・軍が謙虚で、リアリズムを持っていれば、
太平洋戦争の破滅はなかったかもしれません。
あとの祭りは、永遠に引きずっていく。
遺骨収容、北方領土、米軍との関係など。
参考
司馬遼太郎 | 小笠原マルベリー (ogasawara-mulberry.net)
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