「魚雷艇学生」(島尾敏雄)
「魚雷艇学生」(島尾敏雄)
1985年発行、「魚雷艇学生」(島尾敏雄)。
https://www.shinchosha.co.jp/ebook/E610071/
著者はこの本が発行された翌年に亡くなりました。
享年69歳。
本書が生前出版された最後の小説でした。
本書は連作短篇で7章から構成されています。
連作のうちの「湾内の入り江で」が川端康成賞、
全体の「魚雷艇学生」が野間文芸賞を受賞しました。
小説の体裁を取っていますが、
主人公Sとは、島尾氏当人で、体験記録といってもいいぐらいです。
1章「誘導振」で、海軍に入って訓練を始めるところから、
7章「基地へ」で、第18震洋隊長として加計呂麻島に着くところまでが
描かれてています。
実戦に配属されるまでなので、入隊から訓練や生活の様子がメインです。
主人公Sの、冷めたような、屈曲したような感情が随所に出てきます。
文章そのものは読みやすいのですが、
改行が少ないので、切れ目のない文章で、そういう面での読みにくさがあります。
3-4ページも改行がない部分もありますから。
本書にはない部分ですが、
結局、この部隊は特攻としての出陣はなく終戦を迎えました。
実際に彼がいた吞之浦には、
レプリカをおさめた格納庫(壕)が残っており、島尾敏雄文学碑もあります。
https://ogasawara-mulberry.seesaa.net/search?keyword=%E5%B3%B6%E5%B0%BE
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