小笠原マルベリー

自生種で大きな果実の樹木(2001年投稿・再編集版)


 

自生種で大きな果実の樹木(2001年投稿・再編集版)

 

 

概要

 

とある島の会員向け季刊誌に、投稿した文章です。

一般の方向けに、気楽に読める内容のものです。

 

古い情報ですが、小笠原自生種の果実についてなので、

2020年時点でも、特に変わることはありません。

 

 

 

 

 

本文 

 

内地では秋になると、紅葉が始まり、あちこちの森林や公園でドングリが落ちています。

 

小笠原は島が出来て以来の絶海の孤島(海洋島)なため、海が障害となり、

ドングリがなるようなブナ科の樹木は残念ながら、ありません。

ドングリは海を渡って来れないのです。

でも、いくつかの樹木の果実はドングリよりも大きいのに、

この島で自生しているものがあります。

こういう果実はきっと、ほとんどが海流散布という、

長い長い漂流の末にたどりついた果実の子孫なのです。

人間よりもはるか昔の漂流の本家・元祖といえるでしょう。

こうやって、たどり着いた果実はきっと、

水に浮いたり、塩分に強い構造をしたりという性質で、島にたどり着けたのでしょう。

ただ、こういう形で小笠原にたどり着いた果実は、

全体の20%以下で、あまり多くはありません。

大部分は鳥や風を利用して空を超えてやってきています。

いかに海を越えるのが大変なのか分かりますね。
 

そこで、小笠原で、一般的に見られる、大きな果実を紹介したいと思います。

海を越えてやってきた果実は、まず海岸にたどり着きますので、

海岸に自生しやすいはずです。

たとえば、

モモタマナ・テリハボク(タマナ)・ハスノハギリ(ハマギリ)などがそうです。

でも山にもいくつか大きな果実をつけるものもあります。

たとえば、タコノキ・オガサワラビロウ・ヤロードなどがそうです。

こういうものは、必ずしも海流散布ではないのもあるのでしょう。

また、海から渡ってきたにしても、浜辺から山に上がっていくには、

自然の力(台風などの影響)や生物の力があって、山の上に上がれたはずです。

きっと長い長い旅路の末にたどり着いた地だったのでしょう。

これらのものは、海のものも、山のものも、小笠原でも秋に果実を落しますので、

その時期にはあちこちで目にすることでしょう。

秋・冬は山歩きや海岸散歩など、陸地の自然を楽しむのにいい季節です。

ぜひ、探してみてください。

 

 

 

 

モモタマナ:

海岸に自生。広域分布。

桃に似ている果実。中の部分は食用になる。

 

 

 

テリハボク(タマナ):

海岸に自生。広域分布。

果実はゴルフボールよりやや小さ目の球状。食べられない。

 

 

 

 

ハハスノハギリ:

海岸に自生。広域分布。

果実は黄色っぽい肉質の袋(総包葉)に 包まれている。

 

 

 

 

オガサワラビロウ:

 

山地に自生。固有種

ちょうど、ドングリぐらいの大きさで、やや楕円状。

熟すと青紫の果実。

 

 

 

 

 

 

タコノキ:

島じゅういたるところに自生。固有種。

集合果はパイナップル状の大きさで、多数の核果にバラけて落ちる。

核果の深部の種は食用。

 

 

 

 

ヤロード:

山地に自生。固有種。

黄色のラグビーボール状の種子が2個並んでつく。落ちると、バラける。

 

 

 

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    この記事を書いた人

    吉井 信秋

    大阪市旭区生まれ。 茨城県立水戸一高で硬式野球部所属。 北海道大学農学部林産学科(現・森林科学科)卒業。 某企業に就職、栃木県鹿沼市の研究所に配属される。 数年後、異動により東京勤務。さらに数年後、依願退職。 その後、小笠原・父島に移住。 島でいくつかの仕事を経験後、2000年独立開業。 小笠原で山歩き、森歩き、戦跡などの陸域専門ガイドを勤める。

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