「ボニン浄土」(宇佐美まこと)
「ボニン浄土」(宇佐美まこと)
2020年発行、「ボニン浄土」(宇佐美まこと)。
https://www.shogakukan.co.jp/books/09386577
著者のコメント
https://www.shosetsu-maru.com/node/1908
ボニンとは小笠原のこと。
日本名の無人島(ムニンジマ)から、転じて、
英語ではボニン(bonin)となっています。
本書は、小笠原父島が舞台の小説です。
今の話しの部分は実在の地名や場所です。
歴史的背景も現実のものです。
登場人物だけは、モチーフにした人はいるのでしょうけど、
実在の人物ではありません。
重要な役割を果たす小笠原の登場人物は
在来島民(明治に帰化した外国人系)と旧島民(戦前にすんでいた日本人)です。
本書は3つのシチュエーションに分かれ、それぞれで話しが進んでいきます。
1つは1840年に父島に漂着する船、あと2つは今の時代の場面。
今の場面2つは、ほとんど接点はないのですが、小笠原への旅は同じ便です。
その3つが、徐々につながっていきます。
キーワードはオガサワラグワと赤珊瑚です。
小笠原に来たことがある人には特にお勧めです。
まだ来たことない人には事前学習にいいかもしれません。
ここからは本書にからむ個人的見解。
登場人物が言った言葉「ここは浄土じゃからな」。
住んでいて、生活に困らない稼ぎがあれば、確かにそうだと思います。
欲をかかなければ、のんびりとした生活が待っています。
セミの声、本書では夏に向かう時期に出てきますが、
普通は夏以降、父島では9月頃からが普通です。
オガサワラグワ、英語ではマルベリー。
うちの屋号です。
https://ogasawara-mulberry.com/sub3-28.htm
固有種植物として出てくるムニンデイゴ。
現在の見解は、広域分布種のデイコと同じ、つまり小笠原のもデイコ(デイゴ)です。
魚で出てくる「シマムロ」。
シマムロは固有種樹木、小笠原唯一自生の針葉樹。
アオムロ(クサヤモロ)のことかと思います。
(僕はこの魚をシマムロというのは聞いたことはありません)
https://www.ifarc.metro.tokyo.lg.jp/archive/27,1076,55,227.html
https://www.vill.ogasawara.tokyo.jp/reiki_int/reiki_honbun/g164RG00000004.html
本書で出てきた前浜の「舟出」モニュメント。
実はあまり知られていません。これで見に行く人が増えるといいですね。
大人の小説ですから、
性描写、自殺、殺人(銃殺・呪殺・毒殺?)、傷害事件などの場面もあります。
小笠原の子供達にも読んでほしいけど、少し刺激があるかな?
高校生以上はふつうに読めるでしょうか。
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